美空ひばりさん命日 6月24日

歌は世につれ、世は歌につれと言いますが
美空ひばり(以後敬称略)の最初のヒット曲、
「悲しき口笛(S24年)」の歌詞を読むと、
当時の敗戦直後の日本人の心情を
実によく捉えてるような気がします。

歌謡評論家の大御所、故平岡正明氏や
その他先輩方の著書が僕にとって非常に面白く、
それらをヒントに、
ひばりについて思うところを書いてみます。

悲しき口笛の歌詞より

♪丘のホテルの赤い灯も♪
丘のホテル は戦勝国アメリカの象徴だと思います。

♪節も悲しい口笛が恋の街角 路地の細道 ながれゆく♪
路地の細道で悲しい口笛を吹きながら消えてゆくのは
敗北者、つまりひばりから見た周囲の大人だと思います。

感性鋭い少女は、父や兄や周囲の大人たちの
敗北感、悲しみを直感で感じ取って
それが彼女の歌の特徴、
ペーソス溢れる歌声になったのではと思うのです。

ひばりは笠置シズ子の模倣から世に出たと思いますが
笠置シズ子は、
勝利者アメリカの音楽ブギウギを歌った
底抜けの陽気が特徴です。
彼女の歌は今聴いても非常にクオリティ高い曲ばかりですが
どこか勝利者への阿りを当時の日本人が感じても仕方がなかったと思います。

その無意識?の大衆の反発が、模倣=揶揄という役割をひばりにさせ
そしてついには笠置シズ子をはるかに凌駕する支持を
ひばりに与えたように思うのです。

高峰秀子の 銀座カンカン娘 も
当時の心ある人たちがカンカンに怒ったと言われる曲ですが、
コロニアルソング的響きが街頭に流れる度に
敗北感と悔しさに包まれた人たちには

ひばりの曲の根底に流れる哀愁感が一番マッチしたのだと推測します。

美空ひばりの偉大さや凄さについてはあまりにも多く語られすぎており
ここで僕ごときが書いたところで・・・・・
陳腐の極みであると思うのですが・・・・
あえて自己満というくくりで書かせていただきます。

24年前、彼女が亡くなった時のTV映像で、
同年代とみられる女性たちが棺にすがって
泣きながら「ありがとう」と絶叫していたのが
今でも強烈に僕の脳裏に焼きついております。

神様がもしいるとすれば、
戦後、全て失った日本人を歌声で救うために世に遣わされた人だと思うし
いないとしても、
日本人という民族の数十年の感情の蓄積の噴出が彼女であり
仕事=歌うこと 
でたくさんの日本人の人生を励まし勇気づけた
本物のプロフェッショナル・戦後最高峰の仕事人が
美空ひばりであるわけです。

僕も常に仕事においてはプロフェッショナルを「目指して」おりますが
美空ひばりについて仕事人の観点から見れば見るほど
その才能に、ストイックさに、努力に根性に敬服してしまうのです。

彼女の最後のステージは1989年、
平成元年の福岡の小倉での公演でしたが
病状の悪化により数センチの段差も一人では乗り越えることは出来ず
車や新幹線での移動にも耐えられずヘリコプターでの移動
楽屋には酸素吸入機と医師が控え、
その状態でステージに上がると
そのまま死に至るリスクも十分にあったそうです。

通常、こんな状態ではステージは当然キャンセルだと思います。
それに下世話な話ですが彼女はお金は十分持ってるわけで
金のためにステージに上がる理由もない。
それなのに、文字通り寿命を縮めてステージに上がったわけです。

故人となられた今では、そのときの心境も伺うことはできませんが
そこまで体が辛く苦しいのに、彼女をステージに駆り立てたもの 
それは 使命感 だったのではないかと思います。

ひばりの歌で助けられた人、
ひばりの曲があったから頑張れた日本人はあまりにもたくさんいて
そして1回のステージで多くの人の人生を力づけることができる。
観客のそんなエモーショナルなものを全身で感じながら
毎回毎回歌っていたのだと思うのです。

仕事人にとってこんなに素晴らしく嬉しいことはないと思います。

仕事というのは、社会貢献であり、
人々に何か良いものをもたらすことであり
その貢献度や労働や汗の対価としてお金をもらえるのだと思います。

つまりお金が給料が沢山欲しければ
それに見合った社会貢献ができる能力を
頑張って身に付ければいいことだと思うのです。
しかしそんな努力もせずに
臆面もなく金ばかり欲しがる日本人があまりにも増えた。

美空ひばりほどのクオリティの高い仕事は一生かけてもできませんが
仕事=社会に人々に良い何かをもたらす 
ことを追求している僕には
美空ひばりは一生かけて少しでも近づくための努力目標であるわけです。

戦後の焦土から現れ、昭和が終わると共に死去されたことは
あまりにも象徴的だと思うのですが
それにしても昭和が終わり24年たった今、
日本という国は本当に堕落してしまったと思います。

お金を得るために、対価としての労働や汗や貢献をせずに
国に、人に、嘘や詐欺行為や犯罪行為を行なって
お金を得ようとする人があまりにも増えました。

ラクして稼ぐ、働かずに金を得る、
そういった価値観が多くの人の主流となり
そういった手腕に優れた人物が持て囃されがちであります。
もちろんそういった輩が長く続くことはないのは世の常ですが
そんな現状はあまりにも愚かで情けない。

恥を知れ という言葉がありますが
恥の文化・概念というのは日本人が昔から持っていた美徳であり
諸外国から憧れ敬服されたものであると思いますが
そんなものが消し飛んで逆に笑いものになってしまった。

美空ひばりが、または日本人の美徳を歌った
多くの昭和の名歌手たちが
草葉の陰から今の日本を見ていたとしたら、
まず間違いなく嘆いてるだろうと思いながら
しめくくらせていただきます。

投稿日時:2012.06.24(Sun) 20:27:39|投稿者:matsuyamay